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「親にしてみれば、いずれは嫁にいく私にもう部屋は必要ないとどこかで思っていたのでしょう。 でも私にしてみれば、そのとき味わった「女三界に家なし」という喪失感が忘れられませんでした。


以来ずっと、自分の力で、誰からも追い出されない居場所を確保しようという気持ちを持ちつづけていました」結婚したOさんは、二十九歳のときはじめて自分名義のマンションを買う。 「共有名義は考えもせず、一人で買いました。

まるでのちのち離婚することを予定していたみたいだと批判されましたけどね」とOさんは笑った。 三鵬市内の築十一年六七平米のマンションは、一階で庭もついていて、暮らしやすい、とてもいいマンションだった、という。

だが入居してすぐ外壁の塗り替え工事があり、六十万円も負担金をとられた。 ローンの支払いで精一杯の家計からその金額を捻出するのにたいへん苦労し、そのときはじめて集合住宅の管理やメンテナンスにも相応の負担が強いられるのだと気づいたという。


「大規模なメンテナンスエ事の時期を迎えるのが、定年後の収入が少なくなるころに重なったらどうしようかと不安になりました」。 その後、少し蓄えができてきたところで部屋のリフォームをした。

Oさんは人造大理石のカウンターつきシステムキッチンを入れる。 「見た目がとてもよくて、ついふらふらと気持ちが動いて奮発しちゃったの。

ところがこれが大失敗だった」。 人造大理石の表面は、水がついたらすぐにふかないとあとがついてしまう。

キッチンを使うたびに、磨かなくてはならない手間のかかるそのカウンターに、しだいにOさんはいらだちをつのらせた。 「キッチンにあの素材を考えた人は、きっとメンテナンスのことまで考えていなかったにちがいない。

新品のときにはきれいで見てくれはいいけれど、使えば使うほどみすぼらしくなるような設備にお金をかけてしまった自分に腹が立ち、そういう設備をつくっているメーカーに大いに疑問を抱きました。 自分が納得のいく設備のそなわった家で暮らしたい。



そう思ったことが、一戸建てを取得する原動力になったかもしれません」。 そのころ三十代後半にさしかかっていたOさんは、これからどういう場所で暮らすかを真剣に考えはじめた。

人の思惑や都合で追い出されたりしない場所を、自分の力で手に入れたい。

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